アクチャル・プレーイング・タイム ~ 競技時間は? ~
「サッカーの試合時間は、何分間でしょう?」
カテゴリーでもちろん違っていますが、競技規則にある正式な時間は、90分間です。
前後半の最後に主審の裁量で足されるアディショナルタイムを入れて94~95分間
辺りで競技は終了します。
ただ、競技場の時計に概ね秒針はなく、きっかりその時間に終わらないことに首を
傾げている方は多いでしょう。今回は試合時間について考察します。
主審が競技を終了する権限を持っています。それは長い笛の合図で試合終了の時は、
分かりやすく3回吹くこととなっています。ラグビーのノーサイドよろしく、
センタースポットを指すシグナルとともに行う。長い笛なので初めの1回で選手は
理解して負けた方はがっくり、勝った方は喜ぶ。そんな感じです。
ではどんな状況で吹くのでしょうか?
主審はいつ終了の笛を吹いてもOKなのですが、シュートした瞬間に吹くとその
ボールがゴールすることもありバスケットのようにバスケットカウントがある分け
でもなく、サッカーの1点は大きく勝敗を分けるので、そのタイミングで終了の
笛を吹く主審はまずいません。当たり障りのない状況(ルーズボール)を見て笛を
吹く。そのために主審は初めから0~59秒の裁量を与えられています。
90分ゲーム(ハーフ45分)と言いますが、90分丁度に終えようと初めから考えて
ないのです。90分代で終わればいいのです。逆に短いのは1秒でもダメです。
また、現代サッカーの展開の早い攻撃では、自陣ゴール前から10秒もあれば得点
可能です。この矛盾を抱えたアバウトなスポーツがサッカーであることをまず理解
しなければ試合時間の終了がピタットしていないことの違和感を解消できません。
その上にアディショナルタイムが更に付加されるのです。ではどのような時に
主審は時間を付加しているのでしょうか?タイムキーパーがいないサッカーでは
全ての競技の進行責任は審判団が追っています。時間の管理もそうです。
なので審判一人で(両腕に)2個の時計をし、開始前には秒針まで時間を合わせて
います。アバウトであるとともにしっかりもしているのです。
「空費された時間の追加」として競技規則には、アディショナルタイムの説明が
記載されている。以下の5つに集約されています。
・競技者の交代
・競技者の負傷の程度の判断(主審およびドクター)
・負傷した競技者の治療のためのフィールドからの退出(最短のピッチ外が多い)
・時間の浪費
・その他の理由
これだけなのです。競技者の交代は一人20~30秒であるし、交代人数は
国際大会では3名。勝っているチームは後半終了近くなると少しの接触でも倒れて
時間を使うのご存の通りです。なのでトラブルがない普通の進捗の試合では、前半
1~2分、後半3~4分のアディショナルタイム(空費されたとのことで昔はロス
タイム)となる感じが多いようです。
2.インプレー、アウトオブプレー
サッカーの試合では、前述の項目以外でも時間が止まっているような時間があります。
ボールピッチ外に出てからスローインやゴールキック、コーナーキックなどで再開
されるまでの時間。ファウルの判定からフリーキックでボールが蹴られるまでの時間
などです。これらの浪費されているような時間も実は時間は経過しています。
これらプレーの流れで起こるアウトオブプレーの時間を含めた時間が、試合時間で
あるのです。これはフットサル、バスケットのようなタイムキーパーが専属いて
アウトオブプレー全てを一手に管理しなければ無理です。また主審が時間管理を
行い、あの広い競技場で観客も含めたすべての人が時間の共有を行うことは現時点
では不可能でしょう。
時計の止まらないアウトオブプレーなどを含めたインプレー正味の時間を足した
プレー時間を「アクチャル・プレーイング・タイム」と呼んでいます。(あまり有名
ではない)この時間が長いと見ている観客はサッカーそのものを見る時間が長くなり、
観客も退屈しなくなります。まあ選手は体力的に大変になるのですが…
この正味時間がどのくらいかご存知ですか? どう感じるかは人に寄りますが、意外に
短いです。サッカーをしていない時間が30分以上…
以下はJリーグのここ三年間のアクチャル・プレーイング・タイムです。
2015年 2016年 2017年
J1 54:30 56:24 55:00
J2 52:12 51:50 51:07
やはり展開の早いサッカーを行ってるほどその時間は長いです。リーガエスパニョーラ
では約60分にもなります。なのでアメリカなどでは、フットサルのように正味時間
60分ゲームにしようなどの動きがあるようです。ただテレビ放送では時間枠確保で
困ったことが起きるでしょうね。競技時間は決まるけど、試合時間はバラバラ…
見ている人に楽しいサッカーにしようという試みは、今まででも多くありました。
スローイン、ゴールキック、コーナーキックなどを早くするために、ボールボーイを
配置してマルチボールで試合を進行する。W杯などは、各試合キックオフボール
(対戦チーム・時間・場所に更にキックオフの刻印)を含めるとなんと21個のボール
で試合を進行しています。審判団のボールチェックだけで事前にかなりの時間がかかる
でしょう。一個一個、空気圧・重さ・外周・球体に近いかなどのチェックを行う。
それらのことがあって多くのボールで試合を進め無駄な時間を減らしています。
他にもリーグの方針として、リスタートを早く、選手交代を早くなどの申し合わせも
行っているようです。
ただ、FKの名手がいるチームは最大の得点チャンスには時間をかけて狙う。勝って
いて残り時間が少ない場合、アディショナルタイムになると言えども選手交代枠が
あれば交代を行って時間を稼ぐのが作戦(人情)であることもあります。
エンジョイとマリーシアの凌ぎ合いはこれからも続くことでしょう。
そんな観点でもアバウトなサッカーを楽しんでもいいのではないでしょうか?
アバウト過ぎるようにならないよう審判団もガンバです!
文:ロベルト島
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